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奈良地方裁判所 昭和56年(わ)52号 判決

本籍

奈良県橿原市久米町九一七番地の五

住居

右同所

貸衣装業

須美子こと

竹田タマヱ

明治三四年一月一九日生

本籍

前同所

住居

右同

貸衣装店従業者

美穂子こと

竹田美穂子

昭和五年七月九日生

出席検察官

宮下準二

主文

被告人竹田タマヱを罰金一二、〇〇〇、〇〇〇円に、被告人竹田美穂子を懲役一年に各処する。

被告人竹田タマヱにおいて、右罰金を完納することができないときは、一〇〇、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人竹田美穂子に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人竹田タマヱは、肩書住居地において「竹田貸衣裳店」の名称で貸衣装業を営むもの、同竹田美穂子は同店の従業者で、同タマヱに代りその業務全般を統轄しているものであるが、被告人美穂子は同タマヱの業務に関しその所得を秘匿して所得税を免れようと企て、

第一  昭和五二年分の総所得金額は四、九七一万七、九七六円で、これに対する所得税額は二、四五五万六、〇〇〇円であるのに、収支に関する記帳を行わず、所得の一部を仮名あるいは無記名の定期預金等として留保するなどの不正手段により、右所得金額のうち四、六八八万六、一一三円を秘匿したうえ、昭和五三年三月一五日奈良県大和高田市三和町二番地の一七葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が二八三万一、八六三円でこれに対する所得税額が二六万二、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同五二年分の正規の所得税額との差額二、四二九万三、五〇〇円をほ脱し、

第二  同五三年分の総所得金額は三、八七五万五、八九〇円でこれに対する所得税額は一、七四五万五、〇〇〇円であるので、前同様の手段により右所得金額のうち三、四一九万三、五八七円を秘匿したうえ、同五四年三月一五日前同所において、前同署長に対し、総所得金額が四五六万二、三〇三円でこれに対する所得税額が五〇万四、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同五三年分の正規の所得税額との差額一、六九五万六〇〇円をほ脱し、

第三  同五四年分の総所得金額は四、一〇三万六、二四七円でこれに対する所得税額は一、八八四万六、四〇〇円であるのに、前同様の手段により右所得金額のうち三、五二二万九、二六八円を秘匿したうえ、同五五年三月一五日前同所において、前同署長に対し、総所得金額が五八〇万六、九七九円でこれに対する所得税額が七三万六、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同五四年分の正規の所得税額と右申告にかかる総所得金額に対する修正所得税額七九万一、七〇〇円との差額一、八〇五万四、七〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判事各事実を通じ

一  被告人両名の当公判廷における各供述

一  被告人両名の各検察官に対する供述調書

一  被告人両名の各大蔵事務官に対する質問てん末書(竹田美穂子分は昭和五五年一〇月七日付、同五六年一月八日付、一月一三日付三通、一月二三日付二通)

一  被告人竹田美穂子作成の確認書

一  竹田晴彦、木田郁子の各検察官に対する供述調書

一  吉川暁宗、湯浅義弘、辻井七五三一の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官近永哲夫、同宮本和男、関谷真一、檜皮倍弘各作成の各査察官調査書

一  右同広瀬俊邦、同横井啓文、同篠原滋、同山内隆信各作成の現金預金有価証券等現在高確認書

一  笠原保雄作成の預金取引についての回答書

一  葛城税務署長作成の税の納付状況照会に対する回答書、証明書

一  橿原市長作成の軽自動車税の照会に対する回答書、各国民年金の照会に対する回答書、国民健康保険の照会に対する回答書、各税の納付状況照会に対する回答書、不動産照会に対する回答書

一  井澤義夫、逸崎秋夫、関本増太郎、冨士川敏彦、白石守、小寺啓右、横田力雄、川辺康夫、小倉源三、小倉工芸社、岡本三郎、森本肇、川上吉明、田中康一、金山一男、加賀山進、川本忠蔵、中川博、木下吉蔵、北田通、麹谷瀞、佐藤愛各作成の取引内容の照会に対する回答書

一  田中英一、山田往孝各作成の電話料金の支払明細の照会に対する回答書

一  前田郁男作成の各水道料金の支払明細の照会に対する回答書

一  大島寿文、中野茂樹、小守正、相場実、石田精一郎、武藤健、高畑義郎、小幡謙治各作成の生命保険料の支払明細の照会に対する回答書

一  加島康道、岩井督二、北村洋一、永船弘夫、和田精、川北能弘、鈴木恒雄、倉島忠、北田秋浩、大原増一、古川賢次郎、細川義治、安藤勝彦、早川晶子、村井美宜、中山瀧雄、千貫孝男、仲川勉、桜谷治、滝山利治各作成の確認書

判示第二、第三の各事実につき

一  被告人竹田美穂子の大蔵事務官に対する昭和五五年一二月一六日付、同月二五日付各質問てん末書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官冨井信顕作成の証明書(五二年分の所得税の確定申告書)

一  同近永哲夫作成の脱税額計算書、脱税額計算書説明資料(各昭和五二年分)

判示第二の事実につき

一  中村栄記の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官冨井信顕作成の証明書(五三年分の所得税の確定申告書)

一  同近永哲夫作成の脱税額計算書、脱税額計算書説明資料(各昭和五三年分)

判示第三の事実につき

一  辻井賢博の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官冨井信顕作成の証明書(五四年分の所得税の確定申告書)

一  同近永哲夫作成の脱税額計算書、脱税額計算書説明資料(各昭和五四年分)

(適条)

一  判示各所為につき

所得税法二三八条、二四四条一項

(被告人竹田美穂子につき各懲役刑選択)

二 併合罪の加重につき

刑法四五条前段

被告人竹田タマヱについては更に刑法四八条二項

被告人竹田美穂子については更に刑法四七条本文、一〇条

(犯情の重い判示第一の罪の刑に加重する)

三 懲役刑の執行猶予につき

刑法二五条一項

四 労役場留置につき

刑法一八条

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